美しい本作りならおまかせ下さい。自費出版なら「竹林館」にご相談下さい。

出版社 竹林館  ホームへ戻る

  • お問い合わせ06-4801-6111
  • メールでのお問い合わせ
  • カートの中を見る
ホーム > トピックス

トピックス

2016年06月10日
☆6月9日付朝日新聞夕刊に『ペンを持つとボクね』<柿本香苗・詩/ 川上裕己・絵>が、大きく紹介されました。 ☆長岡紀子詩集『四面舞踏会』が、3月21日付京都新聞「詩歌の本棚」に紹介されました。

カテゴリー:ニュース

心優しいにゃんこが読者の背中をそっと後押し

 

▶絵本 にゃんこの魂
▶作・おざきまこと 絵・かまくらまい

 

「にゃんこ」という名前の猫の目線を通して、飼い主夫婦のささやかな日常を描いた絵本詩集。
 在宅でパソコンの仕事をしているママの「のり子」と、営業職でちょっぴり酒癖の悪いパパの「アナタ」、そして自分のことを猫とは思っていない「にゃんこ」の「三人家族」。そんな夫婦にかわいがられるにゃんこの姿を描いた子ども向けの絵本かと思いきや、夫婦の問題にしっかり焦点を当て、大人にも読ませる構成になっているのが面白い。物語の前半で「ませている」にゃんこはこう言うのだ。「のり子さんとアナタのけんかの、ほんとうのわけは/新しい子どもがなかなかできないことにある」と。
 そんなある日、ママは妊娠、出産。「ケンタ」という「弟」が加わり「四人家族」となる。すると、もちろん生活はケンタ中心。にゃんこが汚れた姿でケンタに近寄ると、ママに「バッチイ、にゃんこ、しっし!」とまで言われ、遂に家を飛び出してしまう……。
 自由気ままな「にゃんこ」と「魂」、この何とも不釣り合いな言葉。冒頭でパパ自身も「にゃんこには、魂がない」と言っている。しかし物語の最後、とりわけジグソーパズルのエピソードを通じて、この二語はちゃんとぴったりとくっつくのである。出産を控えたママが病院に入院中、パパがママを喜ばせるためにやっていたのが、にゃんこそっくりの絵が描かれたジグソーパズル。ところが最後のワンピースが見つからず、欠けたまま玄関に飾ることになる。その欠けたピースの犯人は、実はにゃんこだったのだ。家出をしてはみたものの、ママのありがたみをじんわりと感じ……、それでも外の世界で生きることにしたにゃんこは、隠していたピースをお別れのあいさつとして届けることに。そして、にゃんこは完成した猫の絵となって改めて「四人家族」となるのだった。このにゃんこの心遣いには、確かに「魂」が見え隠れしている。
 表紙のにゃんこの表情はぱっと見、笑顔だけれど、よく見ると、右眼から涙の滴がポロリ。何ともいえないその表情を、読後にもう一度眺めてみたい。当初とは異なる感慨が湧いてくるだろう。また、満載のにゃんこの絵の中で唯一背中を向けているものがある。家並みの彼方に浮かぶ月を眺めているカットだ。寂しさを抱えながら、それでも前を向いていこうという強い気持ち、魂の輝き。そう、誰もがにゃんこであったし、いまもにゃんこなのだと気づかされる。
 にゃんこは月に向かってつぶやく。「ぼくはもう、なにがあっても、生きていけると思うんだ」。この小さいけれども温かくて前向きな言葉は、読者の背中をそっと後押ししてくれるはずだ。
(7・14刊、A5変型判60頁・本体1200円・竹林館))

 

※2月6日付図書新聞より転載