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美貌の刺客 ――仙台維新譜

著者
牛島富美二
サイズ
四六版
222ページ
製本
ハードカバー
ISBN
978-4-86000-252-7 C0093
発行日
2013/01/23
本体価格
1,000円

個数  

幕末・維新という時間軸と
     東北・仙台という空間のクロスするところに
     この端正な物語は成立している。
     それは、私たち日本人が置き去りにしてきた
     美学である。
     だからこそ、この歴史物語に
     感動と郷愁を覚えるのだろう。

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木々の向こうに、月が躊躇している。夜空は晴れているが、月の光だけではおぼつかない。建物から木々まではやや距離がある。月の光を頼りにはつは岡に踏み出した。はやる気持ちではつは、わざと後ろを振り返らずに道を横切った。(中略)はつの後を、遅れ気味に歩いていた桂が、一瞬はつを見失い、おい、はつ、どこだ、と声をかけた。ここです、とはつは声を出したが、声が震えた。それを押し殺すように、桂が近づくまで姿を隠していた。月明かりが途絶えたためにはつは、桂の後ろに続いていた二人の兵士に気づかなかった。二人の兵士は、桂が部屋を出た時からひそかに付いて来ていた。桂の腹心である。おい、はつ、と数歩進んだ桂へ、はつはふいに匕首をかざして切りつけた。
「母の仇、覚悟!」
                       (「美貌の刺客」より)

 

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目 次

英雄の黙契

美貌の刺客

火の身ならば

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