三浦勉作品集Ⅱ小説・エッセイ・カット集
- 著者
- 三浦 勉
- サイズ
- 四六判
- 頁
- 216ページ
- 製本
- ソフトカバー
- ISBN
- 978-4-86000-545-0 C0095
- 発行日
- 2025/08/20
- 本体価格
- 1,600円
新しい町で
新しい年が始まる
優しい人たちに支えられて
二人でひとりを生きる
初志のままに
いつか
若い人たちの力で
希望に満ちた
平和な国づくりが
始まることを信じて
(扉詩)
----- 目 次 -----
小 説
妻の恋人
叫び声
ボディ・ガード
月の砂漠
エッセイほか
爪のある風景
ひとり ―「ふなうた」「みのむし」を読んで
十 年
大 人
この先どうなる
丘の上から
窓の眺め ― 理想の生活 ―
夕暮れの八百屋の店先で
幼い子供のような
家 ― 見果てぬ夢 ―
喧しい生活
*
詩が結ぶ二つの人生
詩人・犬塚昭夫のこと
*
大江健三郎における「新しい人」について
カット集
牛窓/旅国内/港など/生きもの/人/花/パリ/その他
あとがき
夫が亡くなってから、ぼつぼつ五か月が経つというのに、いまだに原稿が次々と発見されるのである。すべては本棚の隅々からである。
一月十日、いつもの散歩道を夫と二人、手をつないで歩いたあと、夫は高齢者マンション内の浴場に出かけた。そのあとしばらくして救急車で運ばれた。
マンションの友人たちが浴槽の中に沈んでいた夫の身体を引き上げてくれた。突然の虚血性心疾患が起こったらしい。一瞬のうちに断ち切られた命。
夫が亡くなって一週間も経つ頃から、次々と書棚から見つかったのが、夫の文芸作品である。それはまさに、とどまることなく届けられる、私へのメッセージであった。
葬儀のあと、しばらくしてから見つかったのがノート十冊分以上もありそうな短歌。自分の病気と闘いながら、妻にはあまり伝えず、命の危機を一人乗り越えようとする姿が詠われていた。それから間もなくしてパステルで色付けした花の絵がどさっと出てきた。
そして本棚のあちこちから出てくる手帖には、三か月に一冊くらいのペースで日記のようにつけられたメモ、一日の出来事が、すべて食事のメニューまで記録されている。
そしてつい数日前、出てきたのは短編小説。原稿用紙四、五十枚の小説が二十編ほど。
その中にパソコンできちんと入力されて表紙をつけてある二編―読んでみると主人公は名前を〈波〉と変えた〈私〉であった。
こうしてダンボール二箱半の膨大な原稿を竹林館に送り、竹林館が私の気持ちを受け止めてくれて、夫の作品集が発行されることになりました。
夫のメッセージが皆様のもとに届くでしょうか。
三浦千賀子
追記
この「あとがき」が送られてきた封筒の消印は六月十八日となっています。
ご自身のままならない身体で、ご主人の遺稿集をまとめようと、その強い意
志だけで生きておられたような千賀子さんでしたが、ご主人の後を追うよう
に七月六日にご逝去されました。本当に残念なことでした。心からお二人の
ご冥福を祈っております。合掌。 (「竹林館」左子真由美)