三浦勉作品集Ⅰ短歌・詩・旅行記
- 著者
- 三浦 勉
- サイズ
- 四六判
- 頁
- 184ページ
- 製本
- ソフトカバー
- ISBN
- 978-4-86000-544-3 C0092
- 発行日
- 2025/08/20
- 本体価格
- 1,600円
新しい人になる
命あるかぎり
体の動くままに踊る
ひょろひょろ踊る
いつでもどこでも
下手な絵を描く
楽しみながら描く
一本の線と色と形を遊ばせて
忘れられない人を書く
懸命に生きる人のたたかいを書く
見えない 怒り悲しみ愛を詠む
(扉詩)
----- 目 次 -----
短 歌
月光日録
地上の鎖
午後の空白
不朽/石巻/フクシマ原発
未明
余命
旅
ノートに残されたものから
詩
無知/世界の人びとに/ことばの力/
無題/――を待ちながら/ニュース/
一九九五年一月二日/一度でいいから/
掲示板/夜空のキャンバス/雨/
峠/友よ/鳥のいのち/
脳梗塞/渦/医者の言い分/
後遺症/聖地巡礼/
遠雷(または「新しい人」)/縮む/
鞄/散歩 ⑴/散歩 ⑵/
旅/五十年/刻印/
待つ
旅行記
ポルトガルの旅
上海の旅
あとがき
夫が亡くなってから、ぼつぼつ五か月が経つというのに、いまだに原稿が次々と発見されるのである。すべては本棚の隅々からである。
一月十日、いつもの散歩道を夫と二人、手をつないで歩いたあと、夫は高齢者マンション内の浴場に出かけた。そのあとしばらくして救急車で運ばれた。
マンションの友人たちが浴槽の中に沈んでいた夫の身体を引き上げてくれた。突然の虚血性心疾患が起こったらしい。一瞬のうちに断ち切られた命。
夫が亡くなって一週間も経つ頃から、次々と書棚から見つかったのが、夫の文芸作品である。それはまさに、とどまることなく届けられる、私へのメッセージであった。
葬儀のあと、しばらくしてから見つかったのがノート十冊分以上もありそうな短歌。自分の病気と闘いながら、妻にはあまり伝えず、命の危機を一人乗り越えようとする姿が詠われていた。それから間もなくしてパステルで色付けした花の絵がどさっと出てきた。
そして本棚のあちこちから出てくる手帖には、三か月に一冊くらいのペースで日記のようにつけられたメモ、一日の出来事が、すべて食事のメニューまで記録されている。
そしてつい数日前、出てきたのは短編小説。原稿用紙四、五十枚の小説が二十編ほど。
その中にパソコンできちんと入力されて表紙をつけてある二編―読んでみると主人公は名前を〈波〉と変えた〈私〉であった。
こうしてダンボール二箱半の膨大な原稿を竹林館に送り、竹林館が私の気持ちを受け止めてくれて、夫の作品集が発行されることになりました。
夫のメッセージが皆様のもとに届くでしょうか。
三浦千賀子
追記
この「あとがき」が送られてきた封筒の消印は六月十八日となっています。
ご自身のままならない身体で、ご主人の遺稿集をまとめようと、その強い意
志だけで生きておられたような千賀子さんでしたが、ご主人の後を追うよう
に七月六日にご逝去されました。本当に残念なことでした。心からお二人の
ご冥福を祈っております。合掌。 (「竹林館」左子真由美)