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無垢なもの（イノセントなもの）への
憧れを胸に抱いた吉田の心性は、しかし、
現実世界のなかでは無防備ではいられない。
だからこそ、そのたましいは美しく哀しいのだ。

（佐古祐二「解説」より）

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ひとりでにピアノが鳴りだす
　さまよい出ていく　あなたを
　　呼び戻すかのように

　　だれもいない部屋
　　　だれもいないひとへの
　　　　セレナーデのように

ひとりでにピアノが鳴りだす
　浜辺に打ち寄せる
　　漣（さざなみ）のように

　　　　　　「ひとりでにピアノが…」より

 

---------　目　次　---------

Ⅰ　何もない中に
Ⅱ　天文学者
Ⅲ　明日よ

解説　佐古祐二
「童謡詩と地続きの世界で構築された現代の詩
―そっと世界に触れる美しくまぶしい感情と認識」

あとがき
「帰郷―胸深くする時間」にかえて